『ありがとうございました』

トリックスター、無事、終了しました。

誤解を恐れず言うと…
今回、稽古開始から、精神的にも体力的にも苦しさと辛さしかない1ヶ月半でした。
久しぶりに舞台に立つというワクワク感とか喜びとか、そんな感覚には一切及ばないほど、毎日が闘いの様な日々でした。
何度も挫けそうになりました。しかし、例え挫けたとして…挫けた私に行く所はないのです。だから…やるしかありませんでした。「絶対に逃げない、やり遂げてみせる」その一心だけで、作品と、役と向かいあってきました。
嵐の様な稽古期間が終わり、劇場入り。セットが組まれた舞台に立って改めて分かった事もあり、何とかその感覚を自分のものにしようと必死に食いつきながら本番も過ぎていきました。

全公演が終わった今、まるで全ては夢だった様な錯覚にとらわれています。それ位、私にとっては怒涛の日々でした。

今、会社に復帰して、あの日々を愛おしく懐かしく思い出す余裕が、私にはまだありません。また演じたい!とか、やっぱり舞台っていい!とか、そういう思いも今はありません。
ひとつの闘いがやっと終わった、試合が終わった…そんな感じです。

まあ、これが私らしいと言えば、私らしいのですが…。

ただひとつ。私は『楓』が大好きでした。ずっとずっと『楓』を追いかけていました。
私は楓になれたのでしょうか…
楓として舞台上で生きられたのでしょうか…

ただ無我夢中に、がむしゃらに生きていくエネルギー、そんなものをお客様にお届けしたかった。
少しでもそれを感じてくれた方がいらっしゃったなら、これ以上の喜びはありません。

最後に…
この作品に関わった全ての方に感謝いたします。
素敵な共演者の皆さま、力強いスタッフの皆さま、劇場に足を運んでくださったお客様、その他たくさんの方々…本当にありがとうございました。

また、何処かで…

石井悦子